「あたたまる時間を共に」―見えない世界でのBさんの暮らし file2

楽しみをささえる

Bさんは、70歳後半の男性、身寄りがなくひとり暮らしでした。
30歳後半で2型糖尿病を患い、60歳で脳梗塞になり片麻痺が残りました。70歳には、腎臓が悪くなり人工透析が始まり訪問看護が開始となりました。

Bさんの唯一の楽しみは、透析日以外(週3回)は、喫茶店に行ってコ-ヒーを飲みに行くこと。Bさんは訪問看護が終わると、すぐに喫茶店に行く準備を始めます。雨が降る日は足元が大変危険でしたが、傘をさしながらシルバーカーを押していくBさんの通う後ろ姿を見送っていました。Bさんの寂しさと孤独を埋めてくれる場所が喫茶店でした。

その後、Bさんは糖尿病性網膜症と緑内障が進行し、急激に視力は低下していきました。一人で外出することもできなくなり、寝ていることが増え足の筋力も弱っていきました。Bさん「看護師さん、目が全然みえなくなった、もうあかんわ、死にたい」と話すようになりました。看護師は、Bさんを車いすに乗せ喫茶店に一緒に行くことにしました。いつもの席に座って、店のママさんと常連さんとの会話に耳を傾けながら、コーヒーを飲み過ごす時間が、Bさんにとって心安らぐ時間でした。

それから、いくつもの季節が過ぎていきました・・・。
晩年、Bさんは、膀胱がんが見つかり手術や抗がん剤の治療もせず、緩和医療を選択されました。次第に、体力も低下し自分で起き上がることもできなくなり、訪問看護とヘルパーを増やしサポートを続けていきました。喫茶店のママさんが、Bさんのお家にコ-ヒーを毎日配達してくれるようになりました。Bさんの体を起こしコーヒーをBさんの口もとに近づけると「ああ・・幸せやな」と言って涙ぐまれることもありました。視力を失くしたBさんは、ギリギリまで自宅にいたいという気持ちがありましたが、施設入所を選択されました。

Bさんと通ったその喫茶店の前を通るたびに、コーヒーの香りと共にBさんとの想い出が浮かんできます。今日も、この街で、訪問看護をしています。

出典:糖尿病ケアプラス2023Vol.20no3126-127

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